「まさか、そんなに頭は良くないですよ。何回調べたと思ってるんですか、同じ言葉――・・・
あぁ、この言葉さっき調べたんだけどなぁ・・・って思うから、余計に凹むんですよ、私の記憶力のなさに」
「でも、あれだけの本を読むなんて凄いわ!直ぐに、練習ができる様になるわね!」
「本当に――姫がスノーの教育をするんですか?」
訝しげにエイシアがライラ姫に問いかける
「・・・何よ、文句あるの?エイシア」
「姫は姫らしく――つまらなくても勉強をですね」
エイシアは言いにくそうにそういった。
この世界には珍しい魔女であるライラに勉強をといったところで、説得力も何もあったものではない
「何も知らない人間の方が遥かに多いんですから、人間の姫の様に振舞って頂かないと・・・
面倒なのは重々承知しておりますが――」
「分かってるわよ。適当にやるっていつも言っているでしょう?」
多分、エイシアが言いたいのはその"適当"がまずいんだという事だろう
「さぁ、私は図書館に戻りますね」
「あまり無理はするなよ」
「ありがとう。でも、少し無理しないと、読めないんだよね、あの本」
「スノー、あの本の中身本当に分かってるのか?」
シルバに問われて私はちょっと焦る
「・・・半分は自信ない。いや、それ以上は自信ないかも。読むことに意味があるんだよ、たぶん。
全部は覚えてないけど、何を読んだかは半分くらい覚えているから、
言われれば思い出すし...」
「なんだ、俺とあんまり変わらないのか。安心した」
「シルバは全く内容を把握してないでしょ!」
シルバの言葉にライラ姫が突っ込む
「シルバは魔力がないんでしょう?だったら、私みたいに必死に勉強する必要はあまりないんじゃない?」
「そうも行かないわ。魔法に対する背景や、諸外国の魔力に対する認識、その他魔法関係の歴史や経済を理解してこそ、他国との貿易なんかが行えるの。
それも踏まえて騎士団は組織してあるのだから、理解してもらわないと事件でも起こしたら大変!シルバみたいに魔力のない人間でも、理解だけはしてもらわないと・・・ね?シルバ?」
「ッ・・・そうですね」
ライラ姫に話を振られて、戸惑うシルバ。何かあったのか、それとも相当苦手なのか
「エイシアは?こういうの得意?」
「俺は、得意かどうかは別として、とりあえず何が書いてあるか位は暗記しているよ。まぁ、サーシャと結婚後は役に立つだろうさ」
「そう・・・?」
私の国は、魔法に関しては一切と言っていいほど触れていない。そのことについて誰も疑問を持たないで過ごしてきたけれど、
自分の魔法や魔力に対する無知さでこんなに困るくらいなら、少しくらい教育方針を変えてもらいたいところだ。
私はこの勉強で分かったことは、まだ龍族についてのほんの一部分。
「龍族は、どうしてあんなに桁外れの魔力を持っているの?」
その魔力のお陰で、大きな争いもなくここ何百年かは過ごしてきたけれど、その前には国が起こした戦争で、龍族の圧倒的勝利を手にしたって書いてあった。
これは、千年戦争とか言われるみたいだけれど、何故か私の学校ではやらなかった。
何故?
どうして?
習うと、都合が悪いことがあった?
それは私に関係している気がするのは、私が龍の血を受け継いでいるからって分かったから?
「スノー、今日は満月よ。月光浴は魔力を高めやすくするし、集中力もつく
今夜、庭でやる?」
「あ、はい!是非!」
「じゃあ、俺も!」
「アンタは見回りでもしてなさいッ!」
「えぇッ!?それはエイシアがやれば」
「だったら、エイシアと二人で見回りなさい!」
「・・・姫様の仰せのままに」
「・・・ままにぃ」
まるで子供だ。
エイシアは彼の態度に苦笑を、私は、笑みを零した
それから私はまた図書館に戻って読みかけの本を読む
なんだか昔から知っていたような妙な気分になるのは、本の書き方の所為だろう
魔法について分かったのは、
やはり、魔力が強ければ強いほど、強力な魔法が使えること
魔法は、魔力と集中力と詠唱で発動する。
否、詠唱は集中力を高める為のもので、熟練者は詠唱なしでも魔法が使えるらしい。
ライラ姫の場合、ここまで達しているんだろう
「魔法・・・か」
私にも使えるものなんだろうか?
そういえば、魔力を持った人間は、他の事も出来ると書いてあった。
精霊を使役できる"召喚"だ。
これは、精霊との相性で決まるから、魔力が高い弱いは関係ないらしい
と、本には書いてあったが疑わしい。
魔力がなければ召喚できないが、魔力のないものとも仲良くなる場合があるらしい事も書いてあった
「だったら、シルバは誰にでも好かれそうだな・・・姫以外には」
自分で口に出して、少し笑ってしまった
「あ〜・・・終わんない。これが絵本だったら良かったのにぃ」
その場に分厚い本を置いて、グッと伸びをする
そういえば、昔はよく兄さんに絵本を読んでもらったなぁ・・・
「・・・もう、読んでもらえないなぁ――って、もう大人だから、読んでもらう事も元々ないか」
少し、涙がこみ上げてきて
グッと堪えた
泣いたってどうにもならないし、あの時――パーティの日に沢山泣いたじゃないか
「・・・淋しいよ、兄さん」
私、これからちゃんとやっていけるかな?
彼らに迷惑掛けまくってるけど、嫌われない?
ねぇ・・・
傍にいて
私のこと守ってよ――昔みたいにさ
涙が零れそうになった時、扉が開く音がして、慌てて本を直そうとしたら、逆に大量に床に落としてしまった
私は盛大に溜息をついて、扉を見やる
ソコには、シルバがいた。
「だ――大丈夫か?なんか凄い音がしたけど」
「大量に落としただけなんで大丈夫です・・・」
私は、落とした本を一冊ずつ机に上げていく。
こうやって見ると、随分と読んだ気がする。
「今、大丈夫か?忙しいなら後で――」
「いや、あまりの量に嫌になってたところですよ」
私は苦笑しながら言うと、シルバは頭をポリポリと掻いた
「その・・・ずっとちゃんと謝ってなかったなって思ってさ。
スノーのお兄さんのこと」
「ッ・・・別に、シルバが悪いわけじゃ」
何てタイミングが悪いんだろうか?
今まさに、思い出すのは止めようと思ったところなのに
「謝りたいんだ。本当に・・・ゴメン。
許されるなんて思ってないけど謝りたくて――。
ゴメン、思い出させて・・・いやな思いさせるって分かってたけど・・・
俺、自己中だよな。でも、俺――他になんていえばいいか分からなくて」
私を見てそう言ったシルバ。
「泣くな・・・って無理だよな。」
「い・・・今・・・調度思い出しちゃってた時だったから・・・
ゴメン」
涙があふれて
止まらなくて
シルバは何も言わずに、私の肩を抱いてくれた
特にそれ以上する事もなく
ただ
ただ
そこにいてくれた
兄さん
淋しいよ
帰ってきて?
母さん
父さん
ありがとうもゴメンも何も言えてないよ
言わせてよ
それで
ちゃんと返事してよ
一目ぐらい見たかったよ
私、一人ぼっちになっちゃうの?
家族は
お母さんとお父さんと兄さんしかいないんだよ?
「ゴメン」
この人は悪くない
悪くないけど・・・
「・・・ゴメンって・・・謝るなら、返してよッ!!
返してくれないなら、謝らないでよッ!!
謝らないで、平然と『俺は悪くない』って顔で私の前にいてよ!!!
じゃないと・・・じゃないと」
わたし
「シルバに・・・当たっちゃうじゃない」
シルバは私を抱きしめてくれて、私は彼の胸で泣いた
母さん
父さん
兄さん
会いたい
淋しい
哀しい
だけど、泣くのは今日で終わりにするね。
ゴメンね
忘れるわけじゃないけど
泣いてたって仕方ないから
迷惑掛けるだけだから
頑張って生きるよ。
私のお父さんとお母さんは二人ずついるけれど
忘れたりなんてしないよ
「明日から――ううん、今夜からちゃんとがんばるから・・・」
「今は泣けるだけ泣けばいいさ」
![Powered by 269g[ブログ・ジー]](http://269g.jp/img/269g.gif)